2015.07.27 活動報告
まなび場のエピソード
私が初めて耳にしたA君の情報は「家族に暴力を振るっているようだ」というものでした。
まずはA君に会いたいと思い教室に行くと、A君は友だちと仲良さそうに話していました。
しかしその手にはハサミが握られており、
リラックスした表情と使い方次第で凶器にもなる文房具の対比が印象的でした。
実際にA君と話をしてみると、少しとぼけた印象すら抱くマイペースな男の子で、
初対面の私にも臆することなく趣味の話をしてくれ、
家庭内暴力や凶器のイメージは少し遠のきました。
ただ、A君に家庭での様子をさりげなく聞いてみるも、
話を濁され「家庭内暴力」の真相はヒントすら得られない状況でした。
ちょうどその頃に、お母様と面談する機会を得ることができました。
A君の家庭でとある(A君の暴力疑い以外の)事件が起きたためで、
その相談にお母様が来てくださったのです。
その面談の時に思い切ってA君の家庭内暴力について質問してみると、
A君は今回の事件での警察の対応に抗議の電話をし、
お母様の味方になって一緒に戦ってくれているとのこと。
昨年の反抗期に少し言い争いや暴力などがあったが、現在暴力は全くなく、
むしろ彼の存在を頼もしく感じているとのことでした。
最初に聞いた「家庭内暴力疑い」は反抗期のことが私まで伝わったのだと、
お母様との話から理解することができました。
A君がどれくらい意識しているのかはわかりませんが、
家では母を守ろうと気を張っている様子が直接的にも間接的にも伝わってきました。
アスイクで過ごす時間は誰かに気を遣いすぎることもなく、
友人やサポーター、スタッフなど色々な人と対等な関係で過ごし、
A君が抱えている役割の仮面を少しでも脱ぐことができればと私は考えております。
母を支えるA君を支えることが結果としてできているならば、
アスイクとしてそれほど嬉しいことはありません。
(鈴木)